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―――――――24年前
北東の山中に男女の双子が産まれた。
妹は綺麗な金髪と紫暗の瞳を持ち、元気な産声をあげていた。
しかし銀髪を持つ兄は産声一つあげずに、自分を産んだ母を薄緑色の瞳でジッと見つめていた。
助産婦は二人を取り上げたあと倒れて死んでいるかのようにピクリとも動かない。
そして母―――――香藍は驚愕で瞳を見開いたまま身動き一つしなかった。
いや、出来なかったのだ。
生まれたての赤ん坊の、寒気をも感じさせる冷たい薄緑色の瞳に見つめられただけで。
不意に、赤ん坊が光り輝いた。
あまりの眩しさに香藍が目をきつく瞑る。
再び瞳を開いたときそこにいたのは一人の少年。
歳は12、3歳ぐらいだろうか。
銀髪に薄緑の瞳で香藍は直ぐに我が子だと分かった。
少年は妹を抱き厳重に布にくるめると香藍に無言で頭を下げ扉へと向かう。
「…女の子は紫苑。男の子は緑苑よ」
何を言っても無駄だと察したのか香藍は静かに二人の名前を告げた。
少年――――緑苑は驚いて振り返る。
「貴方たちを見ていたら自然と浮かんできたわ。…これを持っていって」
産後で体力が全く残っていない身体を酷使して香藍はそばに置いてあった袋を投げた。
袋の中身を覗いてみると中には赤い数珠が一つと、二つの十字架のネックレスが入っていた。
「お守り。どうしても無事に産みたくて。違う神様だけどね」
優しい瞳で彼らを見つめる彼女はもう十七の少女ではなく一人の“母親”だった。
緑苑はしばらく彼女を見つめていたがもう一度お辞儀をすると小屋から出ていった。
背中が扉で見えなくなったとき、香藍は急に疲労感が無くなっていくのを感じた。
そして、自分でも訳が分からず、ただ涙を溢した。
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