第一章

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「三蔵一行!!今日こそ魔天経文と命をもらうぞ!!」 「こんな大勢は久しぶりだな」 「ざっと百人ですねぇ。一人何人ですか悟空?」 「んーと…二十五人!!」 「さっさと済ませるぞ」 いつもどおりの日常。 お決まりの台詞を言う妖怪たちを難なく倒していくいつもどおりの風景。 しかし今日は少し違った。 「三蔵!」 「っ、死ね」 ガウンッ、と銃声が響く。 三蔵の元へ駆け寄ってみると背中の真ん中辺りから左下まで血がにじんでいた。 「チッ」 顔をしかめて舌打ちをするのでそう深くはないようだ。 「どうしたんですか三蔵?」 「………別に」 「別にじゃねぇだろ。急にふらついたからビックリしたじゃん」 何も言おうとしない三蔵の代わりにムスッとした顔で事情を話す。 「ふらついた?」 「うん」 その単語に驚いて思わず聞き返す。 最近は妖怪もあまり来ないので疲労は溜まらないはずだと思ったのだが、三蔵は人間だ。 今までの疲れが出たのだろうと思い深くは追求しなかった。 「とりあえず治療しましょう」 八戒の言葉に渋々といった様子で近くの岩に腰かける。 そして上の法衣を脱ぐと中のアンダーウェアが裂けていた。 「ビリッといっちゃってんな」 「繕うのは無理そうですね…まぁアンダーウェアも脱いじゃって下さい」 そうして傷口に気功をあてようとアンダーウェアを脱いだ三蔵の背中を見て目を見開いた。 三蔵の背中のちょうど肩胛骨の下のくぼみ辺りに痣のようなものがあったのだ。 例えるならばそう、天使の翼を無理やりもぎ取ったかのような――――――    
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