天草銀物語

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俺は足を引きずりながら歩く。脱走しようとは思っていたので、テレカを持っていた。公衆電話を探す。途中、民家の前で力尽きる。喉が乾いて限界だった。チャイムを鳴らし、事情を話明する。病院に電話をしてもらって、麦茶をもらった。病院のワゴンが来る。足の手当てをして、病室に戻る。Mさんは責めなかった。足のケガの心配をしていた。看護師の男は包帯を巻く時に「水虫じゃないよね?」と言う。俺は、その日から人の顔が足に近づくことが凄い嫌になった。医者に怒られると思った。けれど医者は怒らなかった。
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