愛してくれとは言わないさ

１

彼が成績優秀なのは今に始まった訳じゃないのは薄々気が付いていたが、ここまで凄いとは思わなかった。

雅俊の家に行くのは今日が初めてではないが、前に二度来ている。
けれど二度とも泥酔状態でベロベロだったらしく、全く記憶が無い。

だから改めて雅俊の自宅を見た感想がこれだ。

「生活感ねぇー…」

玄関を開けて直ぐに違和感は感じたがそれが一体何だったのか理解したのがリビングやキッチンを見てから。
視界に映るのは机に椅子二脚と冷蔵庫、しかも小型…。
あと液晶テレビにソファーが置かれているだけの質素なリビング。

「なんか無いのか…？」
「なんかって？」

彼は堅苦しく絞めていたネクタイをほどき、ジャケットを脱ぐ。

「いや…だからなんか…」
「なんかと言われても……パジャマは俺のを使ってくれよ？」
「あ？あぁ。いやだからさー、こう…人が住んでまーす！ってアピール出来るのもがさ」