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「うわああん」
泣き声がした。とてもつらい泣き声。こっちまで、涙ぐんでしまうような。
「うわああん」
草原に寝転がっていた僕は、心配になって起き上った。どこから聞こえるんだろう、誰が泣いているんだろう? ふっと見ると、赤い髪のおさげの女の子が空に向かって泣いていた。
「……どうしたの?」
僕は草を頭につけたまま、話しかけた。女の子はぴたっと泣きやんだ。
「……だれ?」
鼻声。ぐすっと鼻をこすった。
「おうじだ」
「おうじさま?」
ふふ、女の子は真っ赤な目で笑う。その笑顔が、とても可愛かった。
「すてきね」
ドキンと跳ねる心臓。顔が熱くなった。女の子から目が離せなくなる。
それが「恋」だということに気づいたのは、ずっとあとのことだった。
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