1432人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「はふー」
だだっ広い浴槽に浸かる。手足が伸ばせるお風呂ですら初めてなのに、泳げるお風呂なんて信じられない。
「気持ちいい―」
じんわり温まるからだ。ヘリに顎を乗せ、首筋を撫でる。
――婚姻の証……聞いたこと、あるわ。幼い頃、誰かに教えてもらった。
「……っつ、」
思い出そうとすると、頭の奥がツンと痛んだ。思い出さなくても、困ることじゃないからいいわ。くるりと体をまわし、ヘリに後頭部を預ける。
「天井たっかーい……」
白い湯気でぼやけているけれど、天井が私の家2階分あることは確かだろう。うちに2階はなかったから、縦に重ねた感じ……なのかしら? こんな広いお部屋作って何になるのかしら。ぼやーっとしていると、物音がした。
「マリー、背中洗ってあげる」
「だからいいってば!」
私は熱いお湯をシュバババと入ってきたやつにかけた。
最初のコメントを投稿しよう!