囚われのお姫様

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「はふー」  だだっ広い浴槽に浸かる。手足が伸ばせるお風呂ですら初めてなのに、泳げるお風呂なんて信じられない。 「気持ちいい―」  じんわり温まるからだ。ヘリに顎を乗せ、首筋を撫でる。 ――婚姻の証……聞いたこと、あるわ。幼い頃、誰かに教えてもらった。 「……っつ、」  思い出そうとすると、頭の奥がツンと痛んだ。思い出さなくても、困ることじゃないからいいわ。くるりと体をまわし、ヘリに後頭部を預ける。 「天井たっかーい……」  白い湯気でぼやけているけれど、天井が私の家2階分あることは確かだろう。うちに2階はなかったから、縦に重ねた感じ……なのかしら? こんな広いお部屋作って何になるのかしら。ぼやーっとしていると、物音がした。 「マリー、背中洗ってあげる」 「だからいいってば!」  私は熱いお湯をシュバババと入ってきたやつにかけた。
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