白い女、赤の他人。

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「じゃ、そういう事らしいから僕も非番で」 「はぁ?何寝ぼけた事言ってやがる。宗次郎はまぁいいがてめぇに暇くれてやる理由なんざ何処にもねぇだろ。しかもお前…丁度その日お前が稽古の当番だろ」 沖田の突然の我が儘に、土方は思いきり眉をしかめて軽く彼を睨んだ。 宗次郎は当然口を挟むことも出来ずにただあわあわと焦っている。 「だってその日は一もでしょ?違ったとしても新八さんだ。僕が居ずとも稽古は滞りなく進む。怪我人も少なくなるだろうし」 沖田のこれは、何も今に始まった事では無かった。 彼いわく、自分の言った通りに出来ない隊士達に苛々がたまってしまうからだそうだ。 天才美剣士沖田総司。 天才故の苦労なのだろう。 「何より、小姓の宗次郎が非番なのに僕が仕事だなんて納得いかない」 「てめぇそれが本音だろ」 随分長い前説置きやがって… 「総司は総司!宗次郎は宗次郎だ!それに宗次郎にゃ正当な理由があんだろ」 「何を。僕と宗次郎は一蓮托生…いや、運命共同体。非番を合わせないとどちらかが消えるんだよ」 「おい宗次郎、医者呼んでこい。こいつの頭割って診てもらう」 表情一つ変えず、終始無表情のまま言った沖田に、宗次郎はただただ苦笑を浮かべていた。
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