白い女、赤の他人。

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「宗次…郎……」 先程の殿方の名を呟きながら、私は彼の財布を握りしめました。 これで、また会う口実が出来ます。 口実を作るために私は彼の財布をスったのでございます。 彼は新撰組に居る。 私は、やらねばならぬ事があるので御座います。 財布を握る拳にギュ、と力が入り、自然と私の手の平には爪が食い込みました。 「ケホッケホッ!」 「ったく…だらしのねぇ野郎だなぁおい」 「おまっ…ゴホンッ…平助さんほんっとに怪我人ですかっ!?」 宗次郎も、銀華という白子の女に会ったことをもうすっかりわすれてしまったような頃。 防具をつけた宗次郎に対し、胴だけの藤堂。 平隊士とは別に道場での稽古。 宗次郎は元々剣の腕はからっきしだったが、沖田や藤堂、他の幹部による連日の地獄のような稽古のお陰でなんとか作法は身に付き、同じ歳の者には負けないであろうという程にはなった。 「ってか平助さんは手加減ってもんをですねぇっ!」 「手加減?んなもんしたら手前ぇの為になんねぇだろぃ」 「…棒読みなんですけど」 たらたらと後を引くような口調が特徴的な藤堂という男は、背丈も低く、童顔ながら猫目で中々小綺麗に整った顔をした江戸っ子気質な青年で、沖田とは同い年。 頭のサラシは、約一ヶ月程前にあった池田屋事変の時に額に受けた傷のためだ。
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