55人が本棚に入れています
本棚に追加
玄関へ駆けつけると、そこにはやはりあの日の女が居た。
傘をさしてはいるが、白い肌と髪が眩しくて、宗次郎はほんの少し目を細めた。
表情一つ変えずに一礼してきたので、慌ててこちらも頭を下げた。
「あ、あの…」
「先日はいきなり声をかけてしまい、申し訳ございませんでした。」
「あっ!いえいえそんなっ!寧ろ何て言うか…嬉しかったッス!」
長く白い睫毛に縁取られた大きな赤い瞳に見据えられ、少し頬を紅潮させながら女の言葉を目一杯否定する
「つきまして、今回は此の事でこちらを伺わせて頂いた次第にございます」
そう言いながら、女が懐から出したのは財布。
「あっ!それ俺の…っ」
そう言えば、と目を丸くする宗次郎に、女は微笑みそれを差し出した。
「あの日落ちておりました。もしやと思い参じてみたのでございますが、そうですか、やはり…」
「っ有難うございます!えっと…ごめんなさい、名前…」
前も聞いたのに、と申し訳なさそうにする宗次郎。
そんな姿をクスッと笑って、白い女は唇を開いた。
「銀に華と書いて、"ぎんか"と申します」
最初のコメントを投稿しよう!