白い女、赤の他人。

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「って事で先生ーっ!!十日、デート行ってきても良いッスか!?」 「ほう…お前、わざと僕との稽古の日に被せたな?」 ニッコリと笑って言う沖田だが、目が笑っておらず宗次郎からは一気にダラダラと冷や汗が流れ出した。 何処かへ出ていた沖田が帰ってきたのは、銀華が帰ってから丁度一刻程後の事だった。 藤堂との稽古、そしてその後の掃除を終わらせ、邸内を彷徨いていると土方の部屋に沖田を見つけたのだ。 「駄目に決まってんだろうが馬鹿。餓鬼が色気付いてんじゃねえよ。それに白子なんざ人じゃねぇ」 沖田に将棋で負けたせいか、至極不機嫌そうに言う土方に、宗次郎がムッとして反論する 「失礼ッスよ!銀華さんはスゲー綺麗な人ですーっ」 沖田の背に隠れながらべー、っと子供の様に舌を出す宗次郎。 土方の額に青筋が立つのが目に見えた。 「…僕は別に良いけど、あまり土方さんの前で白子の話はしない方が良い」 「何でですか?」 「おいっ!総司おまっ…」 土方が目を丸くして沖田を止めようとするも、逆に沖田は面白がるかのようににやりと笑う。 「江戸で一度白子の男に…」 沖田がそこまで言うと、土方はそれを遮る様に「分かった」と何度か叫んだ。 「勝手にしやがれ!」 フンっ、と半ば拗ね気味に顔を背けながら土方は渋々宗次郎の話を承諾。 有難うございます!と嬉しそうに宗次郎が言えば更に唇を尖らせた土方を、沖田は小馬鹿にしたように鼻で笑ってやった。 「良かったじゃないか。」 「おうっ!」 「敬語…の罰はまたとして、奥手そうなお前がよく誘ったね」 入隊してまだ一ヶ月弱。 敬語に慣れていない彼は、沖田の侮辱的な言葉より脅し的な言葉に一瞬身を強張らせ血の気を引かせた。
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