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流碧メル
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耳を擽る、鈴の音のような澄んだ声は今までレインが聴いてきた、いかなる者の声よりもずっと耳に響いた。
よくよくとその姿を視界に映してみる。
柔らかな風に優しく揺れる金は、差し込む光と溶け込み、まるで天なる者のように神々しい。
透明感のある滑らかな柔肌は生まれたての雪のよう。
一帯に咲き乱れる華々を背景に取り込んでしまう程の美がそこにあった。
「……あの…?」
黙り込み、ただじっと見つめるままのレインを不審に感じたのだろうか。ガラス球のようなエメラルド色の双眸が揺らめく。
その声を耳にして初めて、レインは目の前に立つ少女が人であることを、レインの捜し求めていた護るべき存在であることを悟った。
フィーネの視線から、彼女が今まで接したことのある貴婦人達とはいささか都合が違うこと、レインを前に媚びやへつらいをすることもなく、ただ一人の男として映しているのだと窺い知ると、途端に嬉しさが込み上げてくる。
レインはその場に跪づき、フィーネ姫の手の甲をそっと取り上げる。まるで、壊れ物を取り扱うかのように、優しく落とす接吻。
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