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流碧メル
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「あの思慮深く、聡明なネイル王が、我が国との戦力差を知らぬわけもない……負け戦覚悟したとにしても、策が篭城とはあまりにおかし過ぎるというもの」
目と鼻の先に鎮在する砦、そこに全勢力を注ぎ込み、立て篭もりを続けている、とは物見の話。宣戦布告という、明らかな開戦宣言を行った国の策とはどう考えても符号が一致しない。
「その辺の事情は、君直属の部下であるオイフェ君の末路を見る限り、到底許すべきではないと僕は思うけどな」
(オイフェ……、そうだ――彼は)
レインの脳裏に、亡くなったオイフェの最期の言葉が蘇る。
沈痛な表情のレインを目に、セプトは満足げに嗤うと
「進攻作戦開始までまだ時間がある――僕は今から寝ることにするよ。今度こそ、よく眠れそうだ」
そう言い残し、場を去った。セプトの姿が陣営のテント内へと消えるのを見送り、レインは再度、もやもやとする思いを、迷いを打ち消すべく、砦の上空を見上げた。
そこで――ふと、きらりと光る『何か』がこちらに目掛けて飛んでくるのが見えた。
「!! あれは――フィーネの……」
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