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流碧メル
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疑問があった。
何故、戦わねばならないのかと。
事態は引き返すことなど到底適わない所を越えてしまっている。今更引き返すことなど出来る所業ではない。
自分の采配一つで、自国の繁栄にも、一歩間違えることがあれば、衰退にも繋がるのだ。
また、兵の背後には彼等をを支える家族という民がいる。
民意無くして、政は成り立たぬ。その民が望む戦いであることをしっかりと胸に焼き付け、刻み込む。
闇が薄らぎ、東の空から徐々に光が燈り始める。昨晩からの暗雲は未だ停滞している。
雲の隙間から差し込んでくる微かな光――夜闇の下、厳かに悠然と聳え立つ砦。そこを攻略すれば、全ては終わる。
隣国であると同時に、同盟国でもあるフィアレイクの裏切り。失った理を正す為、新たな均衡を生み出す為にと、現体制を組み敷く国王軍を討伐する。それが今回、作戦の全指揮を一任され、敵を最後の砦にまで後退させたレイン=シェフィールドの任務だった。
レインには一つの気掛かりがあった。
それは、レインの許婚とされるフィーネ姫のことであった。
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