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Feero様
―――――――――――
それは――髪飾り。
フィーネの十五の誕生日を祝う夜、レインがフィーネに渡した物。蝶を象ったその美しい髪飾りを少し照れながら、しかし嬉しそうに髪につけたフィーネの姿が今でもレインにはありありと思い浮かべることが出来る。
その髪飾りが、レインの数十歩先の地面に音もなく落ちた。周りに兵の姿はなく、気づいたのはレインだけ。
まさかの出来事にはやる気持ちを抑えながら、一歩一歩レインはその近くまで歩いていった。
「……」
そして、それが本当にレインがフィーネに贈った物であることを確認すると、無言のまま拾い上げる。
一体誰が城の方から――いや、あの城にフィーネが居ることは既に分かっているのだから、フィーネかもしくはフィーネの近しき者が投げたのであろう。だから『何故』と置き換えるべきだ。
「これは……文?」
髪飾りの中に挟まっていた物、それは悪質な紙に文字が書かれただけの、手紙とは言えないような手紙。
レインは、ゆっくりと二つ折りになっていたその紙を開く。それは、こんな書き出しで始まっていた。
『――誰か、これを読んだ人はレインにお伝え下さい』
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