【3】傀儡の王と糸を操る参謀

2/9
前へ
/46ページ
次へ
Feero様 ―――――――――――  それは――髪飾り。 フィーネの十五の誕生日を祝う夜、レインがフィーネに渡した物。蝶を象ったその美しい髪飾りを少し照れながら、しかし嬉しそうに髪につけたフィーネの姿が今でもレインにはありありと思い浮かべることが出来る。    その髪飾りが、レインの数十歩先の地面に音もなく落ちた。周りに兵の姿はなく、気づいたのはレインだけ。    まさかの出来事にはやる気持ちを抑えながら、一歩一歩レインはその近くまで歩いていった。   「……」    そして、それが本当にレインがフィーネに贈った物であることを確認すると、無言のまま拾い上げる。    一体誰が城の方から――いや、あの城にフィーネが居ることは既に分かっているのだから、フィーネかもしくはフィーネの近しき者が投げたのであろう。だから『何故』と置き換えるべきだ。     「これは……文?」    髪飾りの中に挟まっていた物、それは悪質な紙に文字が書かれただけの、手紙とは言えないような手紙。    レインは、ゆっくりと二つ折りになっていたその紙を開く。それは、こんな書き出しで始まっていた。   『――誰か、これを読んだ人はレインにお伝え下さい』  
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加