【1】プロローグ~蠢く闇~

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Feero様 ―――――――――――  フィーネ=フィアレイク。その名の通り、レインが今から叩き潰さねばならないフィアレイクの姫君である。    フィアレイクがまだ同盟国であった頃、レインとフィーネは婚約者として幾度となく顔を合わせていた。親同士が決めた許嫁――勿論、どちらも最初は反発していたのだが、二人は出会ったその日に恋に落ちる。    しかし、だからこそレインにとってフィアレイクを敵に回すことは断腸の思いであった。    あの可憐な少女が戦乱に巻き込まれやしないか。そんなことをレインは四六時中考えていたが、敵国の姫を思いやりながら戦うようでは指揮官失格である。    レインは自国の民である兵達を父である国王ドリーから預けられている身、油断も迷いも必要ない。裏切ったのはフィアレイク側であるからにして、慈悲も必要ない。    レインは一つ深いため息をつくと、再び厳かに存在を主張する敵の砦へと目を向けた。   ――何だかんだ言っても、あの砦の中に最愛の女性がいるのだからレインの胸中は穏やかではないのであった。
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