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マスクまん▽様
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砦の方を遠目に見ていると、不意に肩を誰かに叩かれた。レインはゆっくりと後ろを振り向く。
そこにいたのはレインとさほど歳の変わらない青年。彼の名はセプト=ガイアクローという。銀縁の眼鏡の向こうに、優しそうな碧色の瞳を持つ。
表情が硬いレインを見て、セプトは笑みを促すように微笑んだ。しかしレインがつられて笑うことはない。
「あまりよくない顔をしているね。君の許婚のことが気になるのかい?」
レインの顔が一瞬強張った。答えは決まっていたが、敵軍を前にして、その問いに応えることはかなわない。レインは沈黙を守る。
「君の気持ちもわかるが、裏切ったのはあちらの方だ。仕方がないことだ……」
セプトからは完全に笑みが消え、共感したように俯く。
「すまない。こんな無神経なこと、聞くべきではなかった」
「いや、良いんだ。気を遣ってくれてありがとう」
セプトに悪気はないだろう。苦笑いをする顔が謝罪の気持ちを表している。
「頼むから、軍の士気が落ちるようなことはしないでくれよ?」
セプトは冗談っぽくそう言って、その場を去っていった。
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