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流碧メル
―――――――――――
勿論、その場は騒然となった。
謁見の場にはレインの姿もあった。
命からがらに帰還した勇者が力尽き、その場に崩れ落ちる――
「オイフェ!!」
レインは叫び、帰還した勇者の身体を受け止める。
伝令係――オイフェは虚ろな瞳で虚空を見上げ、小刻みに震える手を差し延べる。
――まるで、何かに縋り付くように。
オイフェの身体を支えるレインは、救いを求めて伸ばされた手をしっかりと受け止める。
「何が……あった?」
伝令係とはいえ、重要文書を運ぶ者。オイフェは、レインが所属、統制する『クロスナイツ』部隊の一員。剣の腕もそこそこに立ち、愛国心のある発言や意見から軍の中でも、一目置かれる存在だったといっても過言ではない。
そんな彼が倒されることなどよっぽどの事由があるに違いない。
「…お…う…じ…。
フィ……フィア…レイクで……、す」
「……!!?」
オイフェの口から出た言葉はレインを動揺させるに充分な響きだった。
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