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マスクまん▽様
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体が一瞬ビクリと跳ねた。それは触れられたくなかったことに触れられたようだった。
レインが振り返ると、セプトは悲しそうにレインが抱える亡骸を慈悲の目で見ていたが、一瞬だけ不気味に口元が緩んだ。
レインはその一瞬、背筋が凍るような感覚を覚えた。その理由はわからない。
オイフェの生死を優先するといって、本当は頭の中に何度も過ぎった最悪のシチュエーションを紛らわせていた。
しかし、セプトの言葉がそんな現実逃避を困難なものにする。
レインは困惑して一言も言葉を発せない。
セプトは立上がり、謁見の場に来ていていた人々の方を振り返って、両手を広げて訴える。
「皆さん!
これが長年、同盟国と銘を打って我々と親睦を深め合ったフィアレイクの末路です!
こちらに不利な交易を何度も交わしましたが、それも平和を保つためなら仕方なしと辛抱してきました。
しかしどうでしょう、この有様は!
彼らの死を無駄にしないためにも、今こそ我らは立ち上がるべきではないのでしょうか!」
普段、感情に流されず冷静なセプトの強弁にその場の皆は流された。
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