―フリーズしてます―

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ぶちまけたコーヒーを綺麗に拭き取り、私は再び加藤君の前に腰を下ろした。 「先ほどは大変失礼しました」 相変わらず俯き加減で加藤君に謝罪する。 「いえ、お気になさらず」 う~また笑われてるっぽい。呆れられたかな? ちょっと不安になった私は、チラッと加藤君の顔を伺った。 加藤君は優しげな笑顔で私を見ていた。 とっさにまた俯く。 心臓が激しく動きだし煩い。 その笑顔はマジでヤバいでしょ。 「それで先生、早速なんですが…」 「はっ、はい」 ヤバイ、ヤバイ!落ち着け私。 「今回オムニバスで一冊出すことになりまして、出来れば先生にも参加して頂けないかと思いまして」 「はぁ」 まぁ確かに今の処、切羽詰まってやらなきゃいけない仕事もないし…。 「それで今回のテーマが失恋なんですが。いかがでしょう?」 「失恋……ですか」 「えぇ是非先生には書いて頂きたいんです」 加藤君が急に真面目な声で言うもんだから、思わず顔を見てしまった。 「やっと、見てくれた」 ふわっと加藤君が笑った。 私が好きだった思いでのそのままに、私に笑いかけていた。 .
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