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地元の大学へ進学した私は、3年間見続けていた加藤君の姿を無意識に探していた。
同じ大学では無いので居るはずがないのは分かっているのだが…。
後ろ姿が似ている人が居ればドキッとし、声が似ている人が居ればまたドキッとし…。
そのたびに深いため息を吐いては自分に呆れる毎日。
このままではいけないと思った私は、自分のこの片思いに決別すべく一つの物語を作った。
主人公のモデルは私。
相手役は加藤君。
実名はさすがに照れ臭くて少し変えた。
叶わなかった私の恋は、小説の中では結婚するまでのハッピーエンドとした。
そして私の片想いもなんとかケリをつける事が出来た。
完成した作品は大事に取って置いたのだが、友達が勝手に出版社に出し、それを木村さんが気に入り本が出る事になってしまった。
その本が『春』である。
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