ある花屋にて

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「すみません、コレお願いします。」 レジにいたお客さんが声を掛けた。 店内には人が少ないせいか、店員一人しかいなかった。 「はい、ただいま!」 そう言ってレジに進もうとした時、店員の足元を犬の次郎がスッと通っていった。 「うわっ!」 バランスを崩し陳列品に倒れていった。 バッシャーンッ 見事に陳列品は倒れ店内は水浸しになった。 その音を聞いて店の奥から店主が飛び出してきた。 そしてその状況を見て絶句した。 「もっ申し訳ありません。お客さん服にかかりませんでしたか?」 幸い店内にいた人には害はなく靴が濡れた程度だった。倒れた店員は、土下座して謝っていた。 しかし、その店員の手から血が…。どうやら倒れた商品のバラの刺が刺さったらしい。 私は思わず鞄からハンドタオルを取出し駆け寄った。 「大丈夫?血出てるわよ。」 その声に反応し店員が私を見上げた。その目は潤んでいた。 (かっかわゆい…)
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