靴屋の話

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靴屋さんに来た。 大抵の靴屋さんは大好きなの。格好良いスニーカーやお洒落なブーツ、大人びたローファーは見ているだけで幸せな気分になるから。 でもこのお店だけは違った。 「いらっしゃい……おや、晴香じゃないか。どうぞ、御ゆっくり……」 あれ、何で私の名前知ってるの。今初めて来たのに。 「どうして名前を知ってるかって顔してるねぇ。ま、そんな事はどうでもいいさ。ヒヒヒヒ」 何だか不気味な人だ。 年齢不詳。幼くも感じるし、老人の様な気もする。 深く被った帽子と乱れた前髪のせいで、表情が読めない。 そして、黒いマントの下から大きな、此れまた黒い革靴が覗いている。まるでドナルドの靴を黒くしたような靴だ。 あまり関わりたくないなぁ……と思う。
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