靴屋の話

5/6
前へ
/30ページ
次へ
そして目が覚めた。車の中で寝てしまったようだ。 夢だった。 ただ、その“車だったもの”は原形も留めておらず、私は変形したドアに足を切断されていた。 後で聞いた話だが、対向車線から酒帯運転をしている大型トラックが突っ込んできて、車が大破したらしい。 生存者は四人の家族の中でただ一人、私だけだったそうだ。 ショックはあまり感じなかった。 特に望んでいた訳でも無いが、今更ながら家族の繋がりの薄さを感じた。 しかし、周りの大人は何かと世話を妬いてくる。 五月蝿い。 本当に私を心配している大人はどれくらい居るのかな。いや、もしかすると居ないのかも知れないな。 結局、私は父方の従姉妹の家に引き取られ、車椅子での生活を強いられた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加