《時をかけるオッサン》

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舞台明るくなると、木下が居る。 (半年後である) 加納、共同便所から登場。 加納 「すいません、お待たせしました。あれ? 管理人さんは?」 今井、下手から登場。 お茶を持っている。 今井 「(加納に)お茶どうぞ」 加納 「いただきます」 今井 「それにしましても、まさか当選するなんて」 加納 「厳正な抽選で見事ご当選されたんですよ」 今井 「ちなみに、どの位の応募があったんですか?」 加納 「(困って)えーと……たくさん」 今井 「たくさんって、どの位?」 加納 「(焦って)あの、あまり時間がありませんので、そろそろ撮影しましょう」 今井 「本当にここで撮影するんですか?」 加納 「はい。モデルの方を呼んで来て下さい」 今井 「……では、呼んで来ます」 今井、上手に退場。 加納 「(安堵)フゥ」 木下 「で、どの位?」 加納 「何がですか?」 木下 「応募者」 加納 「ですから、たくさんですよ」 木下 「具体的な数」 加納 「それを知って、どうするんですか?」 木下 「この半年間、近所で応募した話を聞いた事がない」 加納 「……(開き直って)ぶっちゃけて言いますが、この企画は大失敗ですよ。地元住民から募集するなんて、ただの口実です。本当はプロのモデルを使うギャラが無いだけですから。こんな事言うのもなんですが、応募してきたのはあなた達だけですから。潰れかけの結婚式場のチラシの隅っこに小さく載るだけなのに、よく応募しましたね」 木下 「(若干の怒りを覚え)……」 木下、上手に退場。 加納 「あっ、今の話内緒ですよー!」 安原、上手から登場。 赤いネクタイをしている。 安原 「何が内緒なんですか?」
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