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鉄也のスタイルが変わったことに仁は気付かなかったが本能と言える部分が警告する。
本来の仁でなくなった今でこそ、危険回避能力が向上する。精神が崩壊した今、仁を動かすのは仁の抑制された負の感情。
自我の崩壊。そこにいるのは仁ではない仁だった。
目の前の敵を潰したいという感情が押さえ切れなくなって仁は鉄也に向かって飛び込む。
かなりの早さだ。並の奴では反応出来ない。だが仁と組み手をしているのは並みのアドノマリーではない鉄也だ。
(早さだけで勝てる程、俺は弱くないぜ。つっても、まずは仁の早さに慣れんと・・・)
鉄也は集中する。そして仁が左ジャブを打つのが見えた。鉄也は右手で合わせる。
(取った！)
と哲也は確信する。しかし。
フッと仁が消える。右の拳が空を切る前に鉄也は拳を止めるがもう遅い。
仁はジャブをフェイントに使い、鉄也の左側に回り込んだのだ。
仁を見失った鉄也だが、左眼の片隅に仁の残像を捉える。
集中した鉄也の動体視力が完全にとは言えないが仁を捕える。
しかし、間髪入れず、仁が低くめの体勢から鉄也のボディに右ストレートを打つ。
残像と気配で仁の場所を特定した鉄也はこれまでにない位、集中し仁との時間軸のズレを消す。
そして、右足を軸に回転し左手で振り落とす形で仁の拳を払うと同時に手首を掴む。
掴んだ手首を流れに任せ仁の体を引く。
(！？)
仁がバランスを崩し考える間も与えず、鉄也は左に回転するのを止め今度は右に回転。
仁が逆関節の状態で鉄也は背負い投げを実行する。
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