さくら

6/14
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 半月前まで、私・山岸あゆみは、いわゆる「キャリアウーマン」だった。  やりがいのある仕事に就けたことがうれしくて、他人に負けたくなくて、それこそ寝る間も惜しいくらいに働いた。  でもそれは、それを怠ったことで会社に、他人に、そして自分の価値観に負けてしまうことを恐れたゆえの行動だったのだと今ならわかる。  寝る間を惜しむくらいに働いていたら、本当に眠ることを忘れた身体になってしまって、ある日ようやく眠れた……と思って、次に目が覚めたときにはこの部屋にいた。  私は半月前、自宅で意識を失って倒れたのだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!