3人が本棚に入れています
本棚に追加
「お母様はその夜 遅くに逝ってしまった…」
いつの間にか茜の時は終り、空は青紫に変化している。
辺りからはチリチリと鈴のような虫の音が聞こえ始めていた。
「お母様が私に残してくれた言葉。…沢山のものをみて、優しい人になりなさい…」
ラピスはちょっと空を見上げ深く息を吸い込んだ。
「でも私はアーシュリッドの、サラガス家の"姫"で この城で生きていくしかないのよ。ずっと考えてたけど…」
名残を惜しむ青紫の空に瞬きだした星を見つめるラピス。
――綺麗な横顔―…
自然にラウドは そう感じていた。
「でもね、昨日気付いたの!!」
気の抜けたラウドは
急に振り向いたラピスの瞳をまともに見てしまった。
「分からないのは城の中しか知らないからだって!別に城から出ちゃえばイィのよね!だからねラウド…って、‥ラウド?なんで あさっての方向見てるの?」
………。
「あ…ゃ 外って、町でしばらく暮らしてみるのか、うん。民の暮らしを知るのもいぃかもね!」
どぎまぎで少々 挙動不振のラウド。
しかし そんな様子を気にもとめずラピスはさらりと言ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!