ペガサス姫と仲間①

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  鮮やかな黄緑色をなびかせて さやさやと草が鳴っている。 深く吸い込んだ風は 鼻の奥に澄んだ湿り気を残す。 夕暮れが近い。     ここに こうして座って どのくらい時がたったのか――     視線の先には 一筋の雲を除いて 一羽の鳥の姿もない。 その雲もすでに視界の端の方から茜色に染まりつつある。       「何から話せばいいのかな…」     少女は木の幹にもたれ、物思いに耽っている。 彼女の名は ラピス・アーシュリッド・サラガス。 昨年、王妃を亡くした アーシュリッド国の姫である。   城内ではひそかにペガサスの姫、つまり じゃじゃ馬と呼ばれていた。     『思い立ったが吉日』 まるで本当に その背に翼があるかのような身軽さで その歳になるまでどれほど周りをハラハラさせてきたことか。     そんな彼女、 昨晩思い立った一大決心を早くも明日 実行しようと企んでいた。      
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