四刻神創世神話(概要)

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   分け始めてから少し経つと、まだ混ざり合ったままの世界の底に、暁の神が何かを見つけて拾い上げた。  それはどうやら赤ん坊で、世界が初めて自らの力で生んだ子供であった。  暁の神が子を取り上げると、混沌は子を繋ぎとめようと細い紐をつけてよこし、赤ん坊は大きな声をあげて泣き始めた。  神々は手を休め、はじめに驚き、次に喜んで、子供を神々の輪に迎えた。  光の神が混沌と子とを繋ぎとめる紐を切り、宵の神が体の汚れを洗い流した。  最後に闇の神が柔らかな布でその体をくるむと、赤ん坊はようやく泣き止み、眠りについた。  混沌より生まれた子は、その身の内に神々の持たぬ剣を秘めて生まれてきた。神々にはそれが分かったが、やがて来たる時のためにその剣を封じた。  神々はまた仕事をはじめ、子は剣を封じられたまま、そのそばですくすくと育った。  混沌を分ける神々の手によって、天と地と海とがようやくはっきりとし始めたころ、固まりかけた大地から、一葉の葉が芽を出した。  それは見る間に高く伸び、大樹となって葉を茂らせた。葉は未だ広がり続ける天を覆い、枝は天と地とを完全に分けた。根は海と大地とを隔てた。  大樹はやがて、赤と白と青の花をたくさんつけたが、その多くは明るくも暗くもない世界に耐え切れず大樹から落ちて流れ、天に咲く星となった。  花はそれぞれの色の中で一際大きな花をひとつずつ残して、全て落ちた。  神々は天と地と海とが自ずから分かれたことで、世界が十分に力をつけたことを知り、世界に光と闇とをもたらすことにした。  大樹に残った三つの花のうち、赤い花を光神と暁神が摘み取り、世界の端に赴いた。  同じく白い花を闇神と宵神が摘み取り、先の二神とは逆の果てへと赴いた。  光神が花を両手で包むと、花は赤く燃え出した。暁神がそれに息を吹きかければ、燃える花は天へ昇り、世界の半分を明るく照らした。  その光はとても強かったので、天にある星々の明かりは息をひそめた。  またその反対側で宵神が花を撫でると、花は淡く輝きだした。闇神がその花を掲げると、花は闇を纏って天へと浮かび、世界の半分を暗闇で覆った。  その光はとても優しかったので、星々は闇の内で思い思いに輝いた。  
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