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とある屋敷の、とある一室の、目前の廊下にて。
男が一人、そこにはいた。
ぴんと延ばした背筋、鋭い眼差し、引き結ばれた唇、その風貌は、まさに厳格そのもの。
しかしそんな風体とは裏腹に、男は今、落ち着きなく右往左往していた。
視線も動き回り、腕を組んだ指先も忙しなく、腕を叩いている。
また、室内から漏れてくる話し声や、不意に聞こえる物音にも逐一反応している。
神経過敏に当たりを気にしながら、落ち着かないその様子は、まさに不審者そのものだった。
立ち止まっては、また動き。再び立ち止まっては、また動き。
何度繰り返したか。永遠にも思われる、その無意味な行動が、また始まろうとした、その時
………ァァア
………ャアアァ
不意にそんな音が室内から漏れてきた。
はっとして、男が扉を見た瞬間、勢いよく扉が開け放たれた。
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