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部屋から一人の男が出て来た。
男は、扉の前にいた男には目もくれず、一目散にどこかへと駆けて行く。
………かに思われたが、走りだす数瞬、その視界に入った人物が、誰であったかに気がつくと、慌てて戻ってきた。
「ご当主!!何故ここに!?」
開口一番、扉からでてきた男は興奮した様子で話かけてきた。
「い、いや、やはり心配でな、仕事も手につかず、来てしまった。
来たはよいが、今更入る訳にもいくまいと、ここで右往左往していたところだ。」
相手の様子に気圧されつつも、当主と呼ばれた男はやや苦笑しながら答えた。
「そうでございましたか!しかしようございました。今まさに精(あきら)さまの下へ、参ろうとしていたところでございます。」
「ということは!?」
「はい!誕生されました!奥方がお待ちです!!」
その言葉を聞いた当主―精は、飛び込むように室内へと入っていった。
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