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御門たちのいる台東区のゴミ捨て場に鑑識が到着して現場を調べている中を御門は歩いて行く。
人気のない住宅街の一角を…
「妙だな」
「確かに妙ですね。フリーターの長友が拳銃で殺されるなんて…」
「……そうではない。私が妙だと思ったのは現場の状況の方だ」
「現場の状況…ですか?」
「いくら人気が少ないとは言え…この一帯は住宅が並んでいる。
ゴミ捨て場の目と鼻の先には古いアパートもあり住民もいる。
だが…誰も銃声は聴いていない」
「確かに…さっき聞き込みをしましたが聴いた人間はいない…
銃声どころか…物音や話声すらも聴いていないのは妙ですね。
それに死んでいた場所もそうだ」
フリーターの長友がなぜゴミ捨て場で死んでいたのか…拳銃で胸を撃たれて殺されていたのか…
どうして誰も銃声や物音を聴いていないのか…考えることは山積みだが順番に考えるしかない。
「確かに長友はフリーターだが、奴には前科があったのだ。
先程…ようやく、思い出せた…」
「え…っ?!前科者ですか!」
「……3年前、長友は麻薬や拳銃などの運び屋をやっていた。
当時、彼に職務質問をかけた私は…長友が麻薬を携帯しているのを見つけて任意同行を求めた。
それで本庁へ連行したのだが妙に静かで…大人しかったな。
担当であった組織対策五課に奴の身柄を引き渡したが…長友はすぐ釈放されてしまったようだ。
当時、彼を引き受けたのが――」
「杉山重泰…ですね」
「――新田!?どこにいたんだ!」
「ちょっと調べものを…」
「…そう…だが、その杉山刑事も銃殺されたようだが…な。
だから、私は覚えていたのか…」
御門はすでに引き払われた遺体に向かい手を合わせて振り向いた。
「さて…聞かせて貰おうか。
君が持ち帰った情報を…――」
鋭い瞳が新田の目を捉えた。
―――――――――――――――
組織対策四課は暴力団関係…組織対策五課は薬物や銃器を扱う。
その組織対策四課の杉山重泰には黒い噂が絶えなかったという。
「ヤクザから金品を受け取って、薬物や銃器の取引を黙認した。
そんな噂が絶えねぇ奴だった…」
「それは飽くまで噂です。
五課と四課は一枚岩ですから…」
「長友浩之…俺も覚えてるよ。
あいつの目は忘れてねぇ…――」
伊達は倉庫から見える空を見た。
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