経済アナリスト

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楽屋に用意されていたお弁当には確かに玉子焼きが入っている。 これがアレルギーの原因かな。 「気になるのは丼ですね。 あっ!ラーメン柳の丼だ…!」 「……有名なのか?」 「茨木さんが先代の頃から贔屓にしているラーメン屋さんで… 行列の出来る有名な店ですよ!」 「その柳の店長を連れて来た」 「下柳正継です」 下柳さんは仕事着のままで現場に来たようで帽子を脱いだ。 「お店は大丈夫なんですか?」 「えぇ、任せて来ましたから…」 「あなたは昨日…この楽屋にいた茨木宗夫氏からラーメンの注文を受けて届けに来たそうですが…」 「……はい…茨木様には、親父の代からお世話になってまして… 私が店を続けられるのも彼の…」 そこまで言うと下柳さんは机上に残されていた丼を見つめた。 「親父が病で亡くなり、店を継ぐことになった私を気にかけ…常に厳しい言葉をかけながら… まだまだ経験の浅い私に対して、ご指導ご鞭撻をして頂いて… 本当に…何と言っていいやら…」 下柳さんの目には涙が滲んだ。 「こちらへ…」 「別室で詳しく話を聞こう」 辻森刑事は彼を連れ出した。 ――――――――――――――― こちら、姫野玲美のいる部屋には女子チームが集まっている。 その中には興奮気味の彩乃も… 「事件の日、玲美さんは仕事場にいて差し入れに来たそうですが…どうして差し入れを?」 「彼はタマゴアレルギーだったんですが甘い物が大好きなので… タマゴを使っていないスイーツを探し出して届けているんです。 昨日も気分転換に出かけて… そしたら…彼は楽屋に一人で…」 「玲美さん…」 そこで部屋をノックする音がしてドアが開き、立っていたのは… 「先生、失礼します」 「住田くん…どうしたの?」 「事情が事情ですので、次の号は休載できるよう届けました。 傷が癒えるまでお休みください」 「ありがとう…ごめんなさいね」 「いえ…」 「あなたは…」 「姫野美先生の担当編集を務めております、住田伸晃と申します」 住田は礼儀正しく頭を下げた。 「イケメンだわ…」 「それと…警察の方が事情聴取をしたいとのことですが…」 「分かったわ。行きましょう。 あなたたちは、ここにいてね」 玲美は住田と部屋を出て行った。
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