第13話 プロローグ

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東京都港地区・湊テレビ ―11:45 『茨木宗夫』と書かれた楽屋にはパソコンに向かう人物がいる。 彼が茨木宗夫…経済アナリストとして情報番組に出演している。 その辛口なコメントが人気を呼び頻繁にブログを更新している。 今、まさにブログを書こうとしているところだったのだが… 「なんだ、この弁当…玉子焼きが入ってるな…まったく。 あれほど玉子は入れるなと…」 茨木はデジカメを机に置き、携帯電話を手に取り電話をかけた。 「もしもし、茨木だ…柳さん?」 茨木が電話をかけたのは、贔屓にしているラーメン屋・柳だ。 茨木は食通として有名であり彼がブログで絶賛した店は流行る… しかし、彼が批判した店は廃れ…店を畳んでしまう人が多い。 「ラーメンを1つ。いつも言っているが、ゆで卵は抜きでな。 場所は、いつもの楽屋だから…」 そこで扉をノックする音が… 「客か…じゃあ、頼む」 そう言うと茨木は電話を切り扉を開けて来客を招き入れた。 ―同時刻・草壁の楽屋 草壁は先日の一件を手帳に記し、ある人物に電話をかけ始めた。 「もしもし、芹沢さんですか?」 なんと電話の相手は芹沢和紀… ―同時刻・須貝恵子の楽屋 茨木の楽屋から少し離れた場所にある須貝恵子の楽屋には、彼女の事務所のタレントがいた。 「みんな、聞いてちょうだい。 次のクール…月9の主演にうちの工藤桐也が選ばれたわ! 桐也!ちょっと前に来なさい!」 「よかったな、桐也!」 少年が照れながら前へ出る。 ―12:03 茨木の楽屋 茨木の楽屋に、おかもちを持った男が来て部屋に入った。 「ラーメンになります」 「君の親父さんはよかった。 濃厚なスープながら、あっさりとした舌触りで食べやすく… 仄かに効いた柚の風味が… それに比べて味が落ちたなぁ…」 「申し訳…ありません」 ラーメン屋の下柳正継は、茨木に一礼して部屋を出て行った。 そこに入れ違いに入って来たのは…ショプライブという通販番組の司会者である久保多康浩。 「お話とは何ですか? これから収録なんですけど…」 「君のやっていること… 私が知らないとでも思ったか?」 久保多の表情が変わった。 ―12:24 茨木宗夫の楽屋 茨木の妻である少女漫画家の姫野玲美が楽屋を訪れ部屋に入ると… 「あ…あなた!」 そこには茨木の死体があった。
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