210人が本棚に入れています
本棚に追加
東京都港地区・湊テレビ
―11:45
『茨木宗夫』と書かれた楽屋にはパソコンに向かう人物がいる。
彼が茨木宗夫…経済アナリストとして情報番組に出演している。
その辛口なコメントが人気を呼び頻繁にブログを更新している。
今、まさにブログを書こうとしているところだったのだが…
「なんだ、この弁当…玉子焼きが入ってるな…まったく。
あれほど玉子は入れるなと…」
茨木はデジカメを机に置き、携帯電話を手に取り電話をかけた。
「もしもし、茨木だ…柳さん?」
茨木が電話をかけたのは、贔屓にしているラーメン屋・柳だ。
茨木は食通として有名であり彼がブログで絶賛した店は流行る…
しかし、彼が批判した店は廃れ…店を畳んでしまう人が多い。
「ラーメンを1つ。いつも言っているが、ゆで卵は抜きでな。
場所は、いつもの楽屋だから…」
そこで扉をノックする音が…
「客か…じゃあ、頼む」
そう言うと茨木は電話を切り扉を開けて来客を招き入れた。
―同時刻・草壁の楽屋
草壁は先日の一件を手帳に記し、ある人物に電話をかけ始めた。
「もしもし、芹沢さんですか?」
なんと電話の相手は芹沢和紀…
―同時刻・須貝恵子の楽屋
茨木の楽屋から少し離れた場所にある須貝恵子の楽屋には、彼女の事務所のタレントがいた。
「みんな、聞いてちょうだい。
次のクール…月9の主演にうちの工藤桐也が選ばれたわ!
桐也!ちょっと前に来なさい!」
「よかったな、桐也!」
少年が照れながら前へ出る。
―12:03 茨木の楽屋
茨木の楽屋に、おかもちを持った男が来て部屋に入った。
「ラーメンになります」
「君の親父さんはよかった。
濃厚なスープながら、あっさりとした舌触りで食べやすく…
仄かに効いた柚の風味が…
それに比べて味が落ちたなぁ…」
「申し訳…ありません」
ラーメン屋の下柳正継は、茨木に一礼して部屋を出て行った。
そこに入れ違いに入って来たのは…ショプライブという通販番組の司会者である久保多康浩。
「お話とは何ですか?
これから収録なんですけど…」
「君のやっていること…
私が知らないとでも思ったか?」
久保多の表情が変わった。
―12:24 茨木宗夫の楽屋
茨木の妻である少女漫画家の姫野玲美が楽屋を訪れ部屋に入ると…
「あ…あなた!」
そこには茨木の死体があった。
最初のコメントを投稿しよう!