少女漫画家

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―2008年8月9日(土) ―10:28 真田探偵事務所 夏休みも中盤に近づき、みんなはリビングでくつろいでいた。 ていうか…暇そうにしている。 「ねぇ、真田さ~ん」 「なんだい、敏樹くん?」 「せっかくの夏休みなんだから…みんなで出かけようよ~。 もぉ、ヒマで死にそうだよぉ~」 「そう言われてもなぁ… 暑いから出かけたくないよ」 この前、事件現場で出会った草壁真悟…彼のことが気になる。 調べたけど須貝プロダクションに所属する俳優で、タレントということだけしか分からなかった。 キャラは違うけど草壁さんの持つ雰囲気は真悟くんに似ていた。 「ヒマだ~ヒマだよ~」 「うるさいわね。いいところなんだから、ちょっと黙っててよ!」 もし、彼が真悟くんなら…なんで他人のフリをしているのか… どうして芸能界にいるのか… 彼と会って、直接、話したい。 「なに読んでるの?」 「ピュアラブ」 「少女マンガよ」 「へ~…オレにも見せて♪」 「敏樹くんに分かるの~?」 違うなら違うって言ってくれれば諦めもつくけど…ボクは彼に何も聞くことが出来なかった。 だから、今度こそは必ず――… 「こいつは驚いたな」 「どうしたんですか、先生?」 「経済アナリストの茨木宗夫が、死亡したらしい…まさに君たちが持っている少女漫画の作者… 姫野玲美は彼の妻だったなぁ…」 「その姫野玲美さんですが…」 冴美さんの後ろから現れたのは… 「――うそ…!」 「姫野玲美さん?!」 「……その茨木宗夫さんの事件でこちらへいらしたそうですが… 事務所へお通ししましょうか?」 「頼むよ。すぐ行くから」 冴美さんは黙って頷き玲美さんを連れて出て行こうとした―― 「――あ、あの!」 顔を赤らめた彩乃さんが、彼女のマンガを手にして呼び掛けた。 「…私…新人時代から姫野先生の大ファンで…ピュアラブも…💦 毎週、楽しみに読んでて… だから…あの…そのぉ…💦 この本にサインしてくださいっ」 彩乃さんが本を差し出すと彼女は本にサインして彩乃さんに渡し…ニコッとわずかに微笑んだ。 「あ、ありがとうございますっ」 彩乃さんは本を抱きしめ、幸せの絶頂を迎えたような笑顔でいる。 「彩乃ちゃん、いいなぁ💦」 「あたしも、もらえばよかった」 経済アナリストと少女漫画家… どうやって知り合ったんだろ。
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