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―11:10 湊テレビ
ボクたちは湊テレビに来ている。
そこにはすでに警察関係者が…
「部屋に荒らされた形跡なしか…顔見知りの犯行ですかね?」
「恐らくな」
慶太さんと御門さんが茨木宗夫の楽屋を眺めてこっちに気づいた。
「おー、幸人くん」
「わざわざ、済まないな」
「ここが茨木さんの…」
「茨木宗夫がレギュラー出演している情報番組で使う楽屋だ。
茨木は特別待遇を受けていたため一人用の楽屋にいたようだな。
この弁当も他の物とは違う。
他の出演者よりも豪華な中身だ」
「うらやましいっす。
オレなんて昼飯は牛丼なのに…」
その時、ボクの目にはラーメンの丼が見えて、それを見つめた。
「これは…」
「茨木さんが頼んだ物だよ。
ほら、知らない?茨木さんって…業界でも有名な食通なんだよ。
なんでも、彼が絶賛した店は客が増えて繁盛するらしいけど…
彼が批判した店は廃れるって…」
それは知ってるけど、ボクが言いたいのは、そういうことじゃ…
「いや、そうじゃなくて…弁当があるのに、どうして出前を頼んで食べたのかなぁと思って…」
「それはねぇ…茨木さんが重度のタマゴアレルギーだったから…
料理に少しでもタマゴが入ってるだけで気を失うらしいよ?
それで、何度も死にかけたことがあるらしくて…有名なんだ。
ブログにも書いてあるしねぇ…」
「ブログ?」
「茨木宗夫のブログだ。
彼は、その日に食べた物を写真に撮影し、アップして日記を書き…大量のコメントを集めている。
ここで絶賛された店は栄えるが、批判された店は廃れてしまう。
彼を恨む人間は多くいたらしい」
「茨木さんは辛口ですからね~」
今の御門さんの口ぶりからすると殺人で捜査を進めているような…
「――山崎警視!」
そこに、慌てた様子の辻森刑事がやって来て御門さんのところへ…
「茨木宗夫の死因はアレルギーによるショック死だと思われます」
「思われます?それって…」
「どういうことだ」
「それが首にロープのような物で絞められた形跡が見つかり…
それが死因とも考えられますが、体にはアレルギー症状が出ているため、どちらとも言えず…
現在、調べを進めてるそうです」
「そうか…」
アレルギーで死んだのかどうか…首を絞められて死んだのか…
それが分かれば変わるかも…
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