89人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「よくやった」
と、光秀は労った。そして、再び配下の兵へと視線を移した。
この中には妻子を持つ者もあろう、両親を養っている者もあろう。
壮大な夢をみる者もあろう、と考えながら光秀は彼らの顔を眺めた。
信長が消えたと同時に、ギロチンを止める役割をしていた紐も焼かれ、ギロチンが落ちはじめている。そして、順調に運んでいる光秀のシナリオでは、彼らは、この戦勝により死へと進むことになるのだった。
光秀と言えば本能寺での謀反の印象が強いために、悪者と評されているが、実際は部下から敬愛された人物であった。
優れた才知と手腕を持ち、人徳や義を重んじる人柄。
かつて落ちぶれた将軍を擁立(ようりつ)し、乱世を鎮め、永劫平和を建立(こんりゅう)しようとしたほど。
そんな光秀だったからこそ――。
最初のコメントを投稿しよう!