火炎

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「敵は本能寺にあり!」 と、叫んだときも部下が反対しなかったのだろう。 しかし、素直についてきた部下に対し光秀は、労る術を無くしていた。 (すまぬ――) その言葉を、口癖になったかのように何度も、何度も呟いた。 (私にも、天下をとるほどの器量はある) と、光秀は思っている。 だが、この薄幸(はっこう)な運命の名将の近くに、さらなる器量と強運の持ち主が存在している。 それが、卑賎の身からはい上がった羽柴秀吉だ。 このような状況に生まれた以上、光秀は引き立て役に徹すると決意した。
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