天王山

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翌日――。 明智軍、羽柴軍は円明寺川を挟み、睨みあっている。 秀吉・光秀以外は密約を知らぬために、明智光秀への憎悪は凄まじいものがあった。 両軍は睨みあったまま一日を過ごした。 この日は、天空が雨を撒いていた。 (ああ……。気候すら私を憂鬱にするか――) と、光秀は気が重くなる。 ときおり、彼は当初の決意とは異なる、降伏の文字を頭に浮かべた。 だが光秀の思案では、ここで本気の一戦を交えねば羽柴殿の功績は重きをなさない、と考えていた。 と、光秀の葛藤を裂くように鬨(とき)の声が響く。 明智軍の伊勢隊が、羽柴軍の中川隊へ突っ込んでいったのである――!
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