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その上、これまで光秀のために奉公してきた部下達が、武士の意地のために死んでいく。
松田勢が側面を衝かれ、隊列が乱れ始めた。
松田勢は黒田・羽柴秀長・神子田隊とも交戦していたのだから、すでに限界であったにちがいない。
見る見るうちに明智軍は兵数を減らす。
さらに戦況は悪化していく。
津田信春が池田恒興、池田元助、加藤光泰らの三方から奇襲を受け、崩れかけた。
「殿、このままでは味方が総崩れとなりますぞ」
と告げる、側近の声は苛立っているようであった。
無理もない。光秀は一切戦況を変えようとはしないでいた。
(そうか。私も死へといくか)
「よし!では皆のもの、この山崎に桔梗を咲かそうではないか」
それは清々しい声だった。
「全軍、進め!」
光秀が叫び、法螺貝がこだましていった。
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