迷走

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それよりも少し前に秀吉は総攻撃の命令をくだしていた。 光秀はそれをしるよしもなく…。 突如として、隊が騒がしくなった。 「何事だ!」 と、光秀が側近に尋ねるよりもさきに、 「――織田信孝、丹羽隊の奇襲」 との叫びが耳に入る。 側面を衝かれた明智軍の混乱は一気に敗北へと導く。 光秀自身に直接敵の攻撃は無かったが、逃げ惑う部下が数名、光秀の脇を通っていった。 中央先陣を務めていた柴田勝定が荒々しく叫ぶ。 「殿、ここは一旦お退きください」 それを聞き、光秀は怒りとも、諦めとも思わせる口ぶりで返した。 「ならぬ!もはやここを死地と決めたのだ」 確かに…。光秀の形相には死臭のような何かが漂っていた。 勝定はそれにハッと気付き、直ぐさま側近達に命令した。
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