89人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
それよりも少し前に秀吉は総攻撃の命令をくだしていた。
光秀はそれをしるよしもなく…。
突如として、隊が騒がしくなった。
「何事だ!」
と、光秀が側近に尋ねるよりもさきに、
「――織田信孝、丹羽隊の奇襲」
との叫びが耳に入る。
側面を衝かれた明智軍の混乱は一気に敗北へと導く。
光秀自身に直接敵の攻撃は無かったが、逃げ惑う部下が数名、光秀の脇を通っていった。
中央先陣を務めていた柴田勝定が荒々しく叫ぶ。
「殿、ここは一旦お退きください」
それを聞き、光秀は怒りとも、諦めとも思わせる口ぶりで返した。
「ならぬ!もはやここを死地と決めたのだ」
確かに…。光秀の形相には死臭のような何かが漂っていた。
勝定はそれにハッと気付き、直ぐさま側近達に命令した。
最初のコメントを投稿しよう!