迷走

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「おぬしら殿を護衛し、一旦退くのだ。 我にしんがりを任せろ」 柴田勝定は元々は柴田勝家の配下だった。 しかし、勝家よりもむしろ明智光秀にその才気を買われ明智秀満の婿となったと言われる。 この混戦の中、しんがりを自ら買ってでた勇敢さは、やはり勝家譲りなのだろう。 後にその武勇に惚れ込んだ堀秀政に召される。 直後、馬を飛ばして来た御牧景重が光秀に、進言した。 「殿、勝竜寺城まで退却下され」 「何を言う! 我が命令に逆らうのか!?」 光秀は馬上で叫んだ。 光秀の言葉を聞き、一瞬間、御牧は表情が固まった。しかしすぐに、 「もはや……、明智軍は総崩れであります……」と、力のない声で告げた。 言われずとも光秀は気付いていた。 先刻から少しずつ味方の姿が消え、敵が近くなっている。 「敵将とみたり!」 光秀の目前まで敵は寄せ集めている。 「殿、お急ぎください」 と、御牧は叫ぶと反転、すぐに敵兵にかかって行き、光秀の視界から消えていった。
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