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しかし、奔流した人馬の群れが光秀を反対方向へと押しやった。
「退け、退け――!」
「敵は崩れた、追え――!」
それと似た叫びが、そこらかしこから聞こえる。
すでに光秀は、馬が流れるままに、任せるしかなかった。
戦馴れしているはずの光秀が、この時はただ混乱した兵の一人となっていた。
どれくらい駆けたか…。
勝竜寺城にたどり着くと、誰もが生気を失い、絶望に打ちのめされてしまっている。
まさしく、これが敗戦とよばれるものだった。
勝竜寺城に着き、光秀は落ち着きを取り戻すと、
何故逃げてしまったのか?
ということを考えた。
普代衆である比田則家、進土貞連らが手傷を負いつつも光秀のもとに寄った。
「ついに我らは負けました……」
と、則家が言うと、
「伊勢、松田のお二方も討ち死にとのことです。
殿、一度安土城へ戻りて再起をはかりましょう!」
貞連は力強い声で光秀に進言した。
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