迷走

7/9

89人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
しかし、奔流した人馬の群れが光秀を反対方向へと押しやった。 「退け、退け――!」 「敵は崩れた、追え――!」 それと似た叫びが、そこらかしこから聞こえる。 すでに光秀は、馬が流れるままに、任せるしかなかった。 戦馴れしているはずの光秀が、この時はただ混乱した兵の一人となっていた。 どれくらい駆けたか…。 勝竜寺城にたどり着くと、誰もが生気を失い、絶望に打ちのめされてしまっている。 まさしく、これが敗戦とよばれるものだった。 勝竜寺城に着き、光秀は落ち着きを取り戻すと、 何故逃げてしまったのか? ということを考えた。 普代衆である比田則家、進土貞連らが手傷を負いつつも光秀のもとに寄った。 「ついに我らは負けました……」 と、則家が言うと、 「伊勢、松田のお二方も討ち死にとのことです。 殿、一度安土城へ戻りて再起をはかりましょう!」 貞連は力強い声で光秀に進言した。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加