迷走

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「ならぬ…!」 光秀の瞳が幽遠とした光りを覗かせた。 則家、貞連はハッとした。 「では殿、どうなさると言うのですか…」 「則家よ、我を介錯するのだ。 さすれば、この惨憺たる景色を見ずにすむ」 「はやまってはなりませぬ…殿」 則家は涙目で訴えた。 貞連は叱るように放つ。 「弱気はなりませんぞ。まだ我等には秀満さまも安土城に居ます。 はやまっては殿に身を捧げた武士に手向けられません」 「この光秀に汚点を生ませる気か!」 勝利できないことを知る光秀は、“潔し“だけが武士として生きる最後の砦だと知っていた。 「汚点とは……! 貞連はそのように言ってるのではありません! ただ、殿は天下人であります。 ここで諦めては、殿は…殿は…末代まで裏切りの汚名を受けますぞ」
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