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「なんだと!」
光秀が青ざめた顔で叫んだ。しかしすぐに、
「裏切り……。確かに……。否定はしない、俺は信長公に謀叛し、天下を奪った」とこぼした。
光秀は悲しくなった。
誰一人、胸中を知るものは無しと。
(全ては、生ける民のため…)
そう、残虐極まりない信長の政策では天下は延々と怨嗟を生み、争いが争いを作り治まることはないだろう。
だからこそ、信長を討ち秀吉に我を討たせようとした。
しかし、この画策を知らぬ者達は……。
表面的な事象から思惟するしかない。
そこから見えくるのは――
(光秀謀叛)
そして、
(秀吉による弔い合戦と光秀の敗北)
でしかない。
それでいい……。
どこかでそう思う。
が、虚しい。
誰にも理解できない葛藤。
名をとるか、実をとるかの決断。
やはり、思う。
「我は運がなかったのだ」
気がつくと光秀は則家、貞連らに連れられ勝竜寺城を去っていた。
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