火炎

5/13

89人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
一種の建築家である。 民衆や世間、伝統、部下や敵対者さらには朝廷ですら材料としか見なさず、己の肉体を道具としか捉えていない。 信長は自身の奥深くにある意志が感じるままに、材料を器用に動かし、理想とする社会を創り上げようとしていた。 信長の理想とは天下を統一し、古い神話の神々を凌ぎ、古今に匹敵することなき時代、または世界を創りあげることだ。 だが――。 神仏にすら敵対し葬るゆえに、反発も大きい。そして、その反発のために戦が絶えることなく、多大な鮮血が彼自身の神話の生け贄のために必要とされた。 恐らく、信長の性格と行為から思惟し、天下をとることは不可能である。 仮に推測が間違っていたとしても、 多大な犠牲を要する信長のやり方では、ほとんどが破壊し尽くされた世界が誕生するだけではないか、と光秀は不安視していた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加