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一種の建築家である。
民衆や世間、伝統、部下や敵対者さらには朝廷ですら材料としか見なさず、己の肉体を道具としか捉えていない。
信長は自身の奥深くにある意志が感じるままに、材料を器用に動かし、理想とする社会を創り上げようとしていた。
信長の理想とは天下を統一し、古い神話の神々を凌ぎ、古今に匹敵することなき時代、または世界を創りあげることだ。
だが――。
神仏にすら敵対し葬るゆえに、反発も大きい。そして、その反発のために戦が絶えることなく、多大な鮮血が彼自身の神話の生け贄のために必要とされた。
恐らく、信長の性格と行為から思惟し、天下をとることは不可能である。
仮に推測が間違っていたとしても、
多大な犠牲を要する信長のやり方では、ほとんどが破壊し尽くされた世界が誕生するだけではないか、と光秀は不安視していた。
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