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光秀は眼差しを尖らす。
そして、秀吉の身体を揺さぶりながら、
「やらねばならぬのだ。殿のためにもーー」
「信長様のために?」
光秀は首肯した。そして、殿の名誉のためである、とだけ言った。
秀吉は黙ったまま、光秀の方を見た。
「名誉で飾るためにだ」と光秀はつけ加えた。小声だが、怒鳴っているような口吻だった。
「待て、明智殿考えさせてくれ――」
秀吉が怯えた表情で言うと、光秀は手を離し、発した。
ーーー
回想を断ち、光秀は瞼を開く。
打って変わり、烈しく燃えてる現実の光景が目に入る。
火炎の眩しさと熱さが、潤いつつある瞳を乾かしていく。
焔が映る光秀の瞳は、希望に燃えてるかのように、照らされていた。
それはあるでは意味正解であり、あるでは意味不正解でもある。
(これで……)
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