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「もういい加減に認めたらどうだ?」
「だから、私はどうしてこんな所にいるんですか?」
「彼の家に不法侵入してただろ?あの彼は、あの彼女の婚約者。君とは同じマンションの住人なだけだと言っているんだよ。」
「私が婚約者ですよ?もう彼を呼んでください。」
「じゃあ、私たちが君を見つけた場所は?彼の部屋だろ?彼の部屋の鍵は、前に住んでた君が、不動産屋に返さずに持っていた鍵。わかるか?」
「まぁそうですけど。彼女が部屋の掃除をしてあげたりしちゃダメなんですか?」
「はぁ・・・。ダメだこりゃ。」
「彼を呼んでください。」
取調室と言われる狭い部屋で、私は何時間も同じ問答を繰り返していた。
「あのコ、彼と付き合っていると妄想してるんだな。妄想が先走り、彼と彼女を殺した事も覚えていないなんて・・・。なんか悲しい事件だな。」
「はい。それも・・・あんな血の海になるまで刺すなんて・・・。」
「いつ来てくれるのかなぁ。ちゃんと植木に水やりしてくれてるかなぁ。早く来ないかなぁ。」
窓からの爽やかな風を受けながら私は彼のことを考えていた。
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