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残りの2日を終え地元に帰って来た。奈緒は2日間ずっとしゃべらなかった。途中で泣き始めたり、叫び始めて大変だった。そしてそれを2組の庄司が心配そうに見ていたのを覚えている。奈緒は携帯を見る事も無く、かかってくる電話に出る事もなかった。
修学旅行から帰って来た後の2日間は学校が休みで、奈緒にあう事はなかった。遥に呼ばれて私と綾香は遥の家に居る。遥の部屋はいたってシンプルである。壁にポスターがあるわけでも無く、キラキラのアクセサリーも飾りも無い。ただ柑橘類の香りがする、風通しの良い綺麗な部屋である。
「プリントするの…あの写真。」
「現像して供養してもらわなくちゃ。ばぁちゃんが昔言ってた。」
遥はプリント機にカメラから取り出したメモリーカードを差し込んだ。
オールプリントのボタンを押すと…写真が徐々に現像されていく…。機械音が3人の沈黙を露わにする。これから来る恐怖に覚悟しているのだろう……。遥の部屋には似合わない重い雰囲気が漂った。
プリンターが機械音を止めた。しかし3人はしばらく動かなかった。
…しびれを切らした綾香は勢いよく立ち上がると写真を持って来て一度躊躇いながらも…静かに座った。
そして……1枚づつ床に置いてゆく。
黒いシミはどの写真にもある。気のせいか…少し大きくなったような気がした。
20枚あたりで問題の写真が出て来た………。
……相変わらず首から上は無い。
「なんでこんな写真撮っちゃったんだろう…」
遥が珍しくネガティブになっていた。
「撮ろうと思っても撮れるもんじゃないし、遥が悪いわけじゃなぃょ…」
「…………………………………綾香…ありがとう…」
遥は少し涙目だった。長いまつげの目は潤うだけで色気を増す。
「奈緒には連絡取れた?」
「ダメみたぃ何度電話しても連絡取れないの。直接行くしか無いね。」
「ねえ」
遥が例の写真をじっと見ながら話かけた。声が少し震えている……
「これ、黒いシミ大きくなってなぃ…?」
私と綾香はしばらく沈黙した。
…少し気づいていたのかもしれないが、改めて言われると……怖い……
「……え?……見せて…」
そう言うと綾香と私は写真を覗きこんだ。
…確かに以前は指先程度だった様な気がするが、少し縦に伸びた様だ。
「…多分……印刷で伸びたんじゃなぃ?よくあるじゃん現像したらちょっと顔が違うとか……あるよね?」
綾香は私に同意を求めてきた。
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