第一章

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「待て、そこのお前だ」 漁も盛りで活気づく秋の市場 縦に長いこの大陸の真ん中付近に位置する、海沿いの街ボリューチの港に緊張が走った (……まずい) 男は背中に冷たい汗を感じた まだ夏の暑さを引きずるこの時季に、ロングコートを着ているせいではない 声を発した人物 その“格好”に問題があるのだ (あれは国王直属の…) 肩越しに見た男の…いや、男達の格好は誰もが知っているものだった 白の装束の上に、あまり機能的とは言えないデザイン重視のチェインメイルを着けている 肘と膝のプロテクターも実戦向きには見えないが、彼らが腰にぶら下げている“モノ”がその存在を示していた 【プリヴィエート】 対魔法使いの討伐部隊である 「おい、訊いているのか? お前が“魔法使い”であることは分かっている、無駄な足掻きをするな」 (…やれやれ、どうしたもんかね…) 背後から近づく足音に、男は二つの考えしか思いつかなかった (とぼけるか…突破か…だな) この街にたどり着いたばかりだというのに…と、男は自分の不運を嘆いた (……相手は三人) チラリと見た時に確認してある その内の一人は、まだ若い女だという事も
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